振り向きざま(阿部夢)

君は、遠かった。

柚菜と田島が…付き合いだしたらしい。
俺にとってそれは、今更な感じもするのだけど。




「…はぁ」




心無いため息が零れ落ちる。
それはすぐに空気に混じって消えた。



なんとなく、やる気がおきない。

何もする気になれないのだ。




「あ、阿部。さっきの資料、職員室まで持ってきてくれ」
「あ…はい」




先生に頼まれた資料を両手で持ち、教室のドアをあける。





「ったく、なんだよこの量…ぜったいこきつかってんなあのハゲ教師」




ぶつぶつ文句を言いながら廊下へと一歩踏み出し、歩き出す。







前は殆どみえない。











「きゃぁっ」
「え？うわっ」





いきなり、目の前で声が聞こえた。
すぐにぶつかったんだろうとわかる。




「悪い、大丈夫か？」
「あ、うん。こっちこそ。そんな多い荷物もってんのに、ぶつかっちゃってごめんね」
「手、はなせねーから…起き上がれるか？」
「平気だよ、このくらい。荷物運びご苦労様！」




転んでしまった少女は、ぱっと立ち上がり
俺の隣をすり抜けた。






すれ違い様、どきりとした。








荷物で視界が殆ど塞がってはいたが、その後姿に、一瞬視線が離せなかった。









短い髪、明るくてはきはきとした声音、身長も…同じくらいだろうか。




彼女に似ている。







「…って、何考えてんだ、俺は」






荷物を職員室に運ぶ。

当初の目的を思い出し、俺は階段を下りた。




















君に出会った廊下で。
(本の少し、予感がした。)

























ああ、阿部…(笑)
阿部、大好きですよ。やっぱ一番好きです。こら、キモイとか言わないの←