温もり(限良)

怖い怖い怖い。







失われていく、温度。

この手の中で、君が温度を失っていく。



べっとりと、手に赤いものが伝い、俺は現実味を感じなかった。






「……志、々尾…？」




俺の手の中で、君は目を閉じている。


聞こえない呼吸。


弱弱しい心音。



嗚呼、嗚呼。





気が狂いそう。







「…っ志々尾！！！！！」














…………最悪の、目覚め。










「…どうした」
「…え…し、ししお…」



屋上。


空が少し、曇っている。




「…なんだ、夢か」
「うなされてたぞ」
「あぁ。だろうな。最悪の夢だ」





最悪、最低。



俺が思う、最も酷い夢だ。



…今でも背中に冷や汗が伝う。




「…なぁ、志々尾」
「なんだ」
「たのむから、俺の前から…いなくなんなよ」
「なんだそれ」
「いいから……。約束」





こんなことが、
正夢になってたまるものか。








リアルすぎる夢に、吐き気がする。






鼻につく、生臭い血の匂い。


温かみを失っていく体。








…消えていく、鼓動。











最悪。










「…ここにいるだろ」
「…ん」







手の温度を、確かめる。




ああ、ここに、今、ちゃんと存在するんだ。








ほっと胸をなでおろす。









頼むから、お願いだから。









ここからいなくなったりしないで。








「…志々尾、俺な」












お前がいなくなったりしたら









きっと生きてなどゆけない。











end
(君は、俺の世界の全て。)