03* 本当に、これだけは、どうしても。(希求７題)

これだけは、絶対に、譲れない。

中学三年の冬。

受験を控えているからか、クラス内も…というか学年全体がそわそわして落ち着かない。






野球部は、夏の試合で引退。

真面目にお勉強というわけではないが、それなりに受験を考える時期ではあった。





「う～～おぉっ…」
「ちょ、うるさいんですけど。何？さっきから唸って」



三年では、田島と同じクラスだった。

…さっきから隣でうんうん唸っている。
うるさくて読書の一つもしてられない。




「俺、埼玉の西浦高校受けようと思ってんだけど、判定が×ばっかなんだよなぁ～」



ノーテンキに鼻と口で鉛筆をはさみ
何が書かれているかも読み取れないようなノートと向かい合っている。




「…田島、もしかしなくても、ここの高等部行かないの？」
「おう。じいちゃんちが近いほうがいいかなって」
「………マジですか」






うっかりしていた。




田島はこのまま、高等部へと進学するもんだと思っていた。







…まさか









「やっぱ…その高校でも野球部はいるんでしょ」
「もち！てか、俺野球しかできることねぇ」
「威張るとこじゃない」







まいった。






大問題だ。














…ぶっちゃけ、私の頭もそんなによくはない。














(どうしよう。譲りたくないあいつの後ろ。)