01* 望んで、求めてみても、良いですか。(希求７題)

望んでも、求めても、いいですか？





この手の届かない君へ。

何度も感じていた。


私では、あいつには勝てないと。





もちろん、それはあたりまえだろうし
私だって理解して、納得していた。



でも、悔しい。




自分が女であることが。



たまらなく、悔しい。






「…田島」
「ん？おお、柚菜」
「さっきの球、あんただったらもっと上手く転がせたんじゃないの？」
「あー、だよなぁ～。今日調子悪くてさ！」



…何処が調子が悪いんだ




今日の二試合とも、
ジャストミートのタイミングで打ち返し

三塁打まで決めたくせに。



もちろん、嫌味で言ったつもりなのだ…




なのに…





「…私、あんたが嫌い」
「え？マジで？俺って嫌われてんの？」
「…そのテンションがウザイ」
「うわっ！なおしようがないところなのに！」




悪びれる様子も
傷ついたそぶりも見せず




田島は守備位置へと走っていった。














…ああ、遠いな。







私は、いつも背中しか見ていない。




あいつの四番。



背番号。





つかめない、届かない。











「…ホント、嫌いだ」










この守備を終えたら、今度は私の打順からだ。




公式戦では出ることの出来ない悔しさ。




だからこそ、負けたくない。






女だから、なんてのを理由にして
諦めたくない。






「…見てなよ」







口元を引き締め
グラブを叩く





その四番に、あいつの背中に




追いつけるまでは、絶対に。















そう…




絶対に。






























(望むのは唯一つ。あいつの背中の四番だけ。)